今日紹介する本は「職人」:(永六輔)。
職人の考え方、仕事に対する想い、プロの意識を知ることのできる一冊。
永六輔の「職人」を読んで、様々な物の考え方を知る
永六輔さんが、日本の職人の言葉や考え方を紹介する形で描かれている本書には、職人ならではの面白い話がたくさんあります。
ここでは、その中から考えを発展できそうなものをいくつか選び、どのように考える事が妥当なのか、自身の成長に活かせる事はないか、探っていきたいと思います。
何かをする時は、自分自身に問いかけてみる
よく何か物事を始める時には、それを始めていいのか分からない事があります。
新しい趣味として、盆栽を始めてみたいけれど、途中で飽きてしまうかもしれない。
どうしようか、といった具合に、悩んでしまう事もあります。そんな時は、職人の次のような言葉が腑に落ちるのではないでしょうか。
“俺は、何かするときに必ず自分の体に調子を聞くよ”(P.5より引用)
確かに、これが一番正しい判断基準かもしれません。
趣味としての盆栽に興味がある場合、本当に盆栽を始めたければ、身体がうきうきしてすぐに盆栽を買いに行きたい衝動が、身体に満ちているのではないか、と思います。
逆に、盆栽がそれほど欲しくなければ、身体は特に高揚しておらず、色々と判断材料を持ち出してきて買おうかどうしようか、いつまでも迷ってしまうのではないか、と思います。
このように、何か判断をする時には、身体に聞いてみるという事が大切だ、という職人の判断には、優れた知見が満ちているように思われます。
その他にも、何かしようと思った時、手に汗をかいていたら、それは自分には合わない事かもしれません。
例えば、しゃべる事の苦手な人がアルバイトでアナウンサーの仕事をしようとした時、きっと苦手意識が働いて、手に汗をかくのではないか、と思います。
そのような時、自分の身体の反応を見てみて、身体がこの仕事を嫌がっているのだな、と感じとり、別のアルバイトを探すようにしよう、と考える事が、自分の身体に調子を聞いて物事を判断するという事なのだと思います。
このようにして物事を判断していれば、確かに自分に向かない事を避けて、向いている事を選択していく事ができ、その都度、賢い判断をする事ができるでしょう。
しかし、やっかいな事に、人生には、苦手な事に立ち向かわなければならない事もあります。
自分が話す事が苦手だと分かっていても、結婚式でスピーチを頼まれた時などは、断る訳にはいきませんし、計算が苦手だと分かっていても、仕事で資料の作成に様々な計算をしなければならない時もあります。
このような時、身体の反応としては調子を悪くして、ぶるぶると震えたり、身体全体がだるくなってしまうかもしれません。
確かに、それは自分にとって苦手だという合図なのでしょう。
しかし、人の身体というのはすごい物で、苦手な物も慣れてくると緊張しなくなったり、苦手意識が希薄になる事もあります。
これは、自分の身体と調子の合わなかったものが、その場面に慣れてくると調子が合うようになってくる、という事であり、人間の身体の不思議を表しているように思います。
人は、何かする時に自分の身体に調子を聞く事が大事なのは言うまでもありません。
身体は自分の意識に反して正直であり、やりたい事に対しては好意的に、やりたくない事に対しては否定的に働きます。
私達は、基本的に身体のそのような賢い判断力に身を任せていればいいわけです。
しかし、それ以外の場合であっても、やりたくない事をやっているうちに、身体は慣れてくるものです。
こちらの、つらいけれどなんとか行けそうかい?という問いかけに対して、身体が、ああ、大丈夫だ、と対応してくれているかのような、身体がそのような反応を示す事もあります。
このように、身体の意志に反して、やりたくない事をやっていると、身体はそれに調子を合わせてくれます。
そのようにして、苦手分野を克服した、という経験を持っている方もいるのではないでしょうか。
つまり、こちらが、身体の調子をうかがう事がある一方で、身体が調子を合わせてくれる事もあります。
このように、職人のもつ身体に対する鋭い感覚を見ていくと、人は、身体と対話する事ができるという、身体の不思議に思い至り、身体のもつ対応力の高さからは、人間何事も、なんとかなるように出来ているのではないか、という気がしてきます。
職人の仕事に対する思い
職人は、自身の仕事に対しても優れた見識を持っています。
こうでなければ駄目だ、優れた物を作りたい、という一心で、制作の仕事に取り組む姿には、敬意を抱かざるを得ない部分があります。
そのような職人の仕事に対する考え方を表した言葉に、次のような物があります。
“褒められたい、認められたい、そう思い始めたら、仕事がどこか嘘になります。”(P.60より引用)
普通、私達は、誰かに褒められるために、認められるために、仕事をしています。
上司に最近頑張っているじゃないか、と言われたら、素直に嬉しいですよね。
そして、もっと頑張ろう、という気持ちになる事ができます。これはこれで良いような気がするのですが、職人は、このような感情は不純なものであるとして否定します。
では、仕事とは、どのように捉えたらいいのでしょうか。
私の場合、優れた物を作りたいと思ったら、おそらく、自分のためという余計な考えを排除し、良い物を作りたい、優れた物を作りたい、という考えのもと、それを制作するという一点に、目的を集中するのではないか、と思います。
そして、制作においては、そうする事が良い物を生み出す大切な要素なのではないか、と思います。
なぜならば、このような考えが、結果的に優れた集中力や発想力、技術力を発揮させる原動力となるからであり、だからこそ、優れた作品を生み出せるのではないでしょうか。
しかし、職人のこのような考え方には、大変驚かされると同時に敬意を抱くような部分があります。
そもそも、ものづくりをしていると、いかに手を抜くか、形だけ完成させるか、という考えを持って製作に取り組んでしまう事があります。
私も、疲れてくると、やりかけの仕事もとりあえず形だけ仕上げよう、という考えに陥ってしまう事があるのですが、そのような考えで制作を行っている場合は、その価値観は、褒められたい、認められたい、という水準にも達していないのではないかと思います。
その点、職人は、その上を行く精神を持って制作に望んでおり、その点において自身の作るものに対する思いが表れているような気がします。
このように考えてみると、職人の持つ哲学のすばらしさが分かるのではないでしょうか。
その他にも、本書には、仕事に対する思いが述べられている言葉が多数収録されているのですが、例えば次のような言葉は、とても印象的です。
“もし、永さんね、江戸前だと思ってくださるんだったら、この切子の仕事が私たちを江戸前にしてくれたんだと思います。”(P.99より引用)
これは、ガラス工芸の江戸切子を制作している方が、とても江戸前な気性だった事に対して、自身でその理由を考えて答えた言葉です。
ここには、仕事が人を作るという考え方が表れていて、そのような考え方には、とても魅力的な部分があります。
例えば、仕事を通して成長というものを考える場合、プロジェクトをやり遂げる上では、細かい作業をこつこつとこなす忍耐力、士気を保ち続ける精神力、良い物を生み出す上での発想力、皆をまとめ上げる上でのコミュニケーション能力など、様々な能力が必要とされます。
そして、仕事をこなしていくうちに、これらの能力が向上していき、人として成長できるという側面もあるのでしょう。
個人的には、これが、仕事が人をつくる、という事なのではないか、と思います。
そして、ガラス工芸で江戸切子を制作している方が江戸前になるという事も、このような過程を表しているのではないかと思うのですが、それでも、仕事を通して江戸前になるという考え方には、とても面白い要素が含まれていると思います。
このように、本書には、職人が仕事を通して学んだこと、職人としての言葉など、職人が職人として優れている理由が至る所に表れています。
伊勢の白子型紙の職人は、髪の毛を縦に切って、2本にする事ができる、という話や、教えるという事は教わるという事です、という言葉に興味がある方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
きっと、自分の知らない考え方や、思わず頷いてしまうような解釈がたくさんあり、楽しめるのではないかと思います。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
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