さよなら、ニルヴァーナ(窪美澄)書評レビュー:過去最悪の事件を舞台に。

 

今日紹介する本は「さよなら、ニルヴァーナ」:(窪美澄)。

昔、起きた最悪の事件の1つを舞台にした本。

題材にしただけなのでまったくのフィクションなのに、あまりのリアル。

窪美澄さんのファンになった私

 

山田風太郎賞を受賞した「晴天の迷いクジラ」を読み、窪美澄さんのファンになった私は、
書店で本作を見つけると迷わず手を伸ばし購入しました。

「さよなら、ニルヴァーナ」は、1997年に起き、日本全国を震撼させた神戸児童連続殺傷事件が題材となっています。

事件が起きた当時、私は小学生だったので詳しいことはわからなかったのですが、
それでも加害者と被害者が自分とさほど年齢の変わらない子たちであったことは本当に衝撃を受けました。

本作はもちろんフィクションであり、神戸の事件とは一切関係ありません。

しかし、あまりにリアルな描写にどうしても事件のことを考えずにはいられませんでした。

 

以下、簡単なあらすじです。

東京で作家を目指しながら働いていた今日子は、夢を諦め実家に戻り、母親と妹家族の世話をする毎日を送っています。

まるで家政婦のようにいいように使われ、辟易する毎日の中、それでも作家への夢を捨てきれずにいます。

そんなある日、今日子はこの街にかつて凶悪犯罪を起こした少年Aがいるという噂を耳にします。

一方、神戸生まれで現在は東京に住む女子高生・莢は少年Aを崇拝し、ホームページを作ったり、「聖地巡礼」と称して事件現場などを訪れていました。

また、少年Aに娘を殺害された母親は、夫、息子と共に同じ場所にとどまり、
一見平穏そうに見える暮らしを送っていますが、ある日教会の人間から少年Aのファンの存在を聞かされます。

少年犯罪の加害者、被害者遺族、加害者を崇拝した少女、その運命の環の外に立つ作家、
あるとき、それぞれの人生が交錯していきます。

 

「さよなら、ニルヴァーナ」を読み始める前、
あらすじを読んだだけの時点では『犯罪』の物語なのだろうというふうにしか思いませんでした。

しかし、読み始めてみるとそれぞれの登場人物のバックグラウンドが丁寧に描かれていて、
それらが自分自身と重なる部分が多く、「晴天の迷いクジラ」でそういった描写に強く惹かれた私はとても嬉しくなりました。

やはり、私は窪さんが書く人間が大好きだと。

 

どんなに想像し、考えてみても殺人を犯した晴信の気持ちは理解できません。

殺害するだけでなく、遺体を切断したり、その行為に性的に興奮したり……。
はっきり言って、吐き気がするほど気持ちが悪いです。

きっと彼にも、そうしてしまう理由があるのだとは思います。

実際、彼はかなり特殊な環境で幼少期を過ごしています。

田舎の祖母のもとで育っていたのに、突然見知らぬ女性(母親)により、大好きな祖母と引き離されてしまいます。

母親は常に誰か自分を導いてくれる人を探しており、そんな母親に振り回され、宗教団体に入れさせられ、共に生活することも強要されます。

晴信は子供故、反抗することもできませんし、そもそも自分にとってなにが嫌なのか、なにがしたいのか、それすらまだわかっていなかったと思います。

本来なら母親が晴信を導いてあげなければならないのに、母親が未熟なためそれがなされなかった。晴信が人として歪んでいってしまったのは、そういった背景があったと思います。

けれど、だからと言って晴信がしたことは決して許されることではありません。

どんな理由があれ、人を殺すことは絶対に間違っていると私は思います。

それに、晴信が殺害した少女は偶然出会っただけで、彼とはなんの関係もありません。

少女はまだ8歳で、これからの人生で様々なことを経験し成長していくはずでした。

そんな少女のすべてを奪った晴信に、同情の余地は一切ありません。

けれど、けれどそれでも、もし晴信が成長していく中で誰か一人でも彼を正しい道に導いていくことができていれば、悲惨な事件は起きなかったのではないか、少女の未来が奪われることはなかったのではないか。

そう思うとやりきれない気持ちでいっぱいです。

晴信が奪ったのは少女の命だけではありません。少女の家族からも多くのものを奪いました。

少女の母親・なっちゃんも母親の存在に苦しめられた一人です。

母親から愛情を注いでもらえず、つらい青春時代を過ごしたなっちゃんは、自分の力で運命の人と出会い、彼と新しい家族を作ります。平凡かもしれない。

でも幸せだと思える日々を過ごしていた矢先に起きた悲劇。突然、娘が少年に殺されてしまいます。

その日から、なっちゃんたち家族の生活は激変します。家族を奪われ、マスコミに追われ、世間から好奇や同情の目で見られ……。

彼女たちが苦しまなくてはいけない理由は一体なんなのでしょうか。

時が経つにつれ、世間は事件を過去のものとし、人々の記憶からも薄れていきます。

けれど、被害者たちの苦しみ、悲しみは一生消えません。なっちゃんたち家族は永遠に苦しんでいます。

日本には、そんな人々が数多く暮らしているのではないでしょうか。

作中でも語られていますが、日本の司法は加害者の人権は守るのに被害者は決して守ってはくれません。

これはやはり、おかしいのではないでしょうか。

少女を殺害した晴信のことは国家プロジェクトとして守り続けるのに、彼に娘を殺害されたなっちゃんたちはなんのケアをされることもなく、自力で闘い、生きていかなければならない。日本は決して弱者を救ってはくれない。

憤りを感じずにはいられません。

私は決して許したくないし、理解できない晴信ですが、そんな彼を崇拝する人もいます。

莢は晴信に強く惹かれ、彼を追っています。私はそんな莢のことも理解できません。

アイドルを追っかけするならわかりますが、晴信は殺人犯です。一人の人間の命を奪っているのです。

そんな人間に惹かれるなんて……と思いますが、人を好きになることに理由なんていらないし、それを他人が否定することもできません。

それに彼女自身、晴信に惹かれることがよくないことだともわかっています。

彼を追うことをやめなければとも思っています。

それでも求めずにはいられないほど、彼女は晴信に惹かれてしまっているのです。

莢は生まれたときに震災で父親を亡く、そのため母親は莢を育てるために働いています。

母親は海外で仕事をすることも多いため、莢は一人で家にいることが多く、そういった意味で母親からの愛情を感じることができずにいます。

母親に恋人ができ、その人が母親を女性として見たり、母親が女性の顔をするのも思春期の女の子からしたら嫌悪してしまうと思います。

だからこそ莢はネットの世界で見つけた晴信に恋焦がれてしまったのでしょうか。

晴信はネットの中にしかいないし、アイドルと違って彼自身の言葉を聞いたり、動く姿を見ることはできません。

ただ、事件を起こした当時の顔写真と少女を殺害したという事実しか知ることができないから、莢は想像し、美化し、彼を求めるのでしょうか。

事件当時のことを莢が知らないから、現実味がなく、ある種空想の出来事だと捉えてしまうのかもしれません。

莢と同じく晴信に惹かれた作家志望の今日子は、一番読者に近い存在だったと思います。

環の外、安全な場所から事件を覗き、好き勝手に騒ぎ、あまつさえ悲惨な事件を自分の人生のために利用するただの『傍観者』。

私自身がニュースを見るときはまさにそうです。

自分には関係ないからと、当事者たちの気持ちを無視して好き勝手に自論を述べ、言うだけ言ってあとは知らんぷり。ひどいものです。

今日子は晴信のことを書きたいと強く思います。

彼女は夢を諦め実家に戻りますが、そこでは母親と妹家族のために自分を犠牲にして働きます。

妹はまだしも、母親も今日子をいいように利用していて、怒りを感じました。

今日子もまた、母親から愛情を受け取ることができなかった女性でした。

人間の中身が見たい、それを書きたいと晴信に執着する今日子の執念は恐怖を感じるほどでした。

ある意味、常軌を逸した晴信より怖い存在かもしれません。

周囲に不満ばかり持ち、成功した人間に激しく嫉妬し、恋人でもない男性との性行為でストレスを発散させる……。

すごく嫌な人間だと思います。

でも、一番人間らしいのかもしれないとも思いました。

 

人間誰しも汚い部分を持っています。

綺麗事だけでは世の中やってはいけません。でもみんな、汚い部分を見せないようにして生きているのです。

だからそう考えたとき、一番怖いのは今日子のような『普通』の人間なのかもしれません。

この物語に救いは一切ありませんでした。

せめてなっちゃんには幸せになってほしかった。

でも、きっとこれが現実なのだと思います。

被害者遺族が救われることはないのだと、思い知らされました。

悪いのはやはり晴信です。

でも、では彼を糾弾すればそれでよいのかと問われればそれだけでは駄目なような気がして、モヤモヤとしたものが残ります。

晴信のことを書き、夢であった作家となった今日子も結局思い描いていた幸せは手に入れることはできず、更なる地獄を生きていかなければなりません。

 

ああ、これが現実なのかと、打ちのめされたような感覚です。

 

後味は悪く、謎も残ったままなので、ずしんと心に錘を乗せられたような気分になりますが、それでも「さよなら、ニルヴァーナ」を読んでよかったと思えます。

きっと私も人間の中身が見てみたいと思う一人なのだと思います。


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最後まで読んでいただきありがとうございました。


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