はじめての文学講義(中村邦生)書評レビュー:文学へのはじめの一歩が踏み出せる

 

今日紹介する本は「はじめての文学講義」:(中村邦生)。

文学を楽しさを伝えたい

その一旦で、著者の中村氏が高校生向けに講義をしたものを書籍化した本。

そのため、本を読むことが苦手な人でも、読みやすくなっている。

今日は文学好きの読者さんから届いた感想を紹介します。

「はじめての文学講義」で文学の面白さを解剖する

 

文学作品を読んでいると、何が面白いのか、どうして面白いのか、その作品について知りたくなる事はないでしょうか。

特に、難解な作品は、なぜ世間で評価されているのか、分からない事もありますよね。

本書「はじめての文学講義」では、そのような文学の面白さの基本となる部分の表現や手法を、例を挙げて解説する事で、文学の面白さが紹介されています。

ここでは、その中の一例を見ていく事で、著者の考えをとらえる上での一つの例を考えていきたいと思います。

 

ダブルインパクトーーー

「はじめての文学講義」は中村邦生先生によって記された、初心者にも分かる文学の面白さについて書かれた一冊です。

著者は、文学の面白さを、構造の面から色々と紹介していくのですが、まず初めに、視覚的に訴えかける印象的な構造を持ち、優れた構成を持つ文章として、太宰治の「富嶽百景」を例にとって説明します。

 

例えば、富士山をじっと見ているだけでは、いつも通りの富士山の姿しか見えてきません。

しかし、富士山とまるで関係のない、目の前の道ばたに生えている月見草を手前に配置して富士山を見ると、どうでしょうか。

画面の端に月見草が咲いている背後に、大きく雄大な富士山が、立派にそびえたっている光景が見えてくるのではないでしょうか。

 

このように、富士山をただ見ていただけでは平凡に映る風景も、対比する物がある事によって、豊かな情景となって浮かんでくる事があります。

著者は、文学の役割とは、日常生活の中に、このような月見草に相当する物を見つけ出し、つまらない生活を豊かな物に変える事にある、と説明しています。

では、我々の生活には、どのような部分に月見草があるのでしょうか。

 

例えば、日常生活の捉え方の中にも、富士山と月見草は隠されています。

多くの人は、子供の頃は、両親に面倒を見てもらう事が当たり前であり、その事に疑問も抱かないのではないかと思います。

食費を出してもらい、料理、洗濯、ベットのシーツの交換など、両親が全てをやってくれたので、その事に対して無自覚だったのではないでしょうか。

これが、いわば、生活を一面的に見て、その背後にある両親の手助けに気づかない状態であると言えるでしょう。

しかし、そのような子供も、一人暮らしをするようになってから、料理、洗濯の大変さを実感し、やがて実際に仕事をして家族を養うために、お金を稼ぐ事の大変さに気が付くようになるのではないか、と思います。

 

ここで、初めて、一面的に見ていた実生活という物を、背後まで引いて広い視野で捉える事が出来るようになり、日常の全てをやってくれて、子供のわがままをきいてくれていた両親の愛情に気づくのではないか、と思います。

これが、富士山だけを見ていた状態から、画面を引いていって、そこにあった月見草をとらえるようになった瞬間なのではないでしょうか。

両親の愛情という月見草が、実は近くに生えていたんだ、という事に気づいた時、単一だった世界が深みを増すように、世界を新たに捉え直す事が出来るのではないか、と思います。

このように、今まで当たり前に見ていた物や特に意識する事のなかった物に、愛情や感動を見い出した時、人生は新たな生彩をもって輝きます。著者は、文学の手法という物を通じて、そのような物の存在を伝えたかったのではないでしょうか。

 

離れた所にある2つの物が大きな魅力を生み出す二項式

 

著者は、文学の手法として、他にも、二項式という手法を説明しています。

ここでは、魚とカニといったような似通った言葉ではなく、電灯と靴が一緒に出てくる物語にこそ読者を引き付ける魅力がある、と。

海外の児童作家の考えを引き合いに出しながら紹介します。

ここで、著者は、この児童作家の言葉を引用して、次のように述べています。

 

“ある言葉を使うときには、それを使うための文脈があります。

 

しかしそこから外して、別の言葉と対比的な関係を設定し、新しい文脈の中に入れると、両方の言葉が相互に刺激し合い、私たちの想像力はそれらが共存し得る「集合をつくり出すために活動を開始する」。

言葉の相互に刺激し合う複合的視点を持つ関係の場が、日常のありきたりの連想や惰性化した感性とか思考をゆさぶり、現実認識に変容をもたらすのです。”(P.45より引用)

 

このように、言葉を新たな関係の中に投じ入れた時、新たな魅力が生まれるという考え方には、明らかに化学反応を意識した物質の変化を当てはめて考える事ができます。

錆びついた金属を、物質や溶液と一緒に作用させて輝かしい白金を得る化学反応のように、ひとつのまとまりの中に収まっていた言葉を、新たなまとまりの中に投じて不思議で魅力的な印象を持つ言葉を作り出す、という実験は、大変面白い試みであるという事ができるでしょう。

 

このような言葉の変移の作り出す化学反応式は、著者の言うように、どのような輝かしい物質にも成り得る素晴らしさを秘めています。

例えば、先ほど紹介した電灯と靴が一緒に出てくる物語を考えてみましょう。

ある所に、靴で電灯の大きさを測る仕事をしている職人がいました。

世界には様々な形や大きさをした電灯がありますが、職人はそのような電灯の中から自身の靴のサイズとそっくり同じサイズの電灯を探し出し、それを集めて交換所に持って行く、という仕事をしていました。

交換所では、その電灯の光りの具合を確かめて、上等、平凡、下等、に分類して、上等なら500円、平凡なら300円、下等ならリンゴ一個と交換してくれました。

そのような仕事をしていた職人は、ある時、ひとりでにコロコロと転がっていく電灯を見つけます。

電灯は、そのまま転がって行き、家の外まで出て行ってしまいました。職人は物差しとして使っていた靴を履いて、電灯を追いかけますが、、、

 

このように、一見離れた性質を持つ電灯と靴を、ひとつの物語の中で組み合わせると、なかなか面白い世界観が生まれてくるのではないでしょうか。

職人というありきたりの存在の中に、電灯と靴という要素を加える事で、新たな魅力をもった世界観が生み出されるのではないか、と思います。

このように、言葉の二項式という要素を用いて、物語を作っていくという手法も、読者の興味を掻き立てる手法として、紹介されています。

 

人の持つ感情の不思議を描いた作品

 

文学は、人間の感情の不思議を描き出す事も多く、それも文学の楽しみ方のひとつなのですが、著者は、それを示す一例として、川上弘美さんの「センセイの鞄」を取り上げます。

該当箇所は、ポップコーンをまいていた幼い男の子の所に、鳩がたかり出し、それを怖がっていた幼い男の子が、母親に抱かれながら、それでもポップコーンをまいていく場面です。

 

“子供に、また鳩がたかりだす。

母親が子供を叱った。

母親にも鳩はとまろうとしている。

母親は子供を抱いたまま、鳩の群れの中から抜け出そうと移動した。

しかし、子供がポップコーンをまき続けるので、鳩はそのまま母子についてゆく。

鳩でできた大きな絨毯を引きずって動いているみたいに見えた。”

(P.69から引用。川上弘美「センセイの鞄」より)

 

このような場面は、鳩でできた絨毯を引きずるという、視覚的に考えても面白い表現が出てきます。

そして、子供がエサをやる事で集まってきた鳩を怖がり、母親に連れられて移動するのですが、怖いにも関わらず、相変わらずエサをまくという、その怖さを生み出す行為をやめない男の子の行いの不思議が、印象的な効果を持って描かれている、と著者は言います。

 

このように、著者は、人の感情の不思議を描いた作品を紹介し、そこにある文学の面白さを丁寧に解説してくれるのですが、その解説を読んでいると、確かに面白い部分があるな、こういった捉え方が出来るのか、という事に気づかされて、文学の面白さを発見する事ができ、すばらしい読書体験をもたらしてくれます。

 

この他にも、異化作用、一回性といった用語が出てきて、これも面白い解説で紹介されていますし、著者が出会った美しい表現についても取り上げられているので、そのような部分をつまみ食い的に楽しむ事もできます。

ここで紹介した内容に少しでも興味を持った方なら、本書は十分に楽しむ事ができるでしょう。

 

文学の知識のない人でも楽しむ事ができる内容となっていますので、気になったら手に取ってみる事をおすすめします。

 


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最後まで読んでいただきありがとうございました。


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