グロテスク(桐野夏生)書評レビュー:途方もなく重い作品

 

今日紹介する本は「グロテスク」:(桐野夏生)。

人が泥沼にはまって落ちていく様を生ヶしく描いた作品。

読むと心がズンと重くなる。

グロテスク はじめに

 

桐野夏生先生の代表作品の一つで、実際に起きた「東電OL殺人事件」をモチーフにした小説です。

もちろんノンフィクションではないのですが……本作では『佐藤和恵』という名の彼女が、なぜ被害者になってしまったのか。

そして、そもそもなぜ昼間は大手企業の管理職なのに、夜は『立ちんぼ』と呼ばれる最低ランクの娼婦だったのか。

 

彼女の高校時代から丹念に、人が「落ちていく」様を書いています。

その様子はとても恐ろしく、辛く惨めで……正直、三十路の女性としては、後味が重たかったです。

でも、気になって最後まで読んでしまう。

語り部の同級生『わたし』の目を通して描かれた、痛々しい人々の姿……。

いわゆる「怖いモノ見たさ」のような気分で、読んでしまいました。

 

グロテスクのあらすじ

 

物語は、スイス人の父と日本人の母の間に生まれた女性『わたし』の視点で始まります。

美しくない両親と、彼らにソックリな『わたし』。

しかし一つ下の妹『ユリコ』は、誰にも似ていない悪魔的な美貌の持ち主でした。

常に美しい妹と比べられ、自分の心を守る為に、悪意に敏感になった彼女。

そして家族と離れて進学した、超お嬢様学校『Q学園』。

ここで出会ったクラスメイトの一人が、かの被害者となる佐藤和恵でした。

勉強は出来るもののトップと取れる程ではなく、美人でもない。

 

でも

「努力すれば絶対上手くいく」

という父の教え通りに、ガムシャラに頑張る和恵。

その姿は生粋のお嬢様たちから蔑まれ、遠巻きにされます。

それでも、自分の状態に気付かない鈍い和恵。

 

『わたし』は彼女を上手くコントロールし、少しずつ人生を狂わせていきます。

そしてある日、母の死をキッカケに、妹『ユリコ』が同じ学園に転入してきます。

ようやく離れられた妹と、また同じ学校で暮らす羽目になってしまった姉。

彼女は淡々と情報を集め、ある日掴んだ決定的なスキャンダルを元に、妹を学園から追い出しました。

それはユリコが美貌を武器に、売春を行っていたということ。

ほくそ笑む『わたし』ですが……約二十年後、妹は娼婦として、客に殺されます。

 

そして間を空けて、同じ犯人に殺されたのは、元同級生の和恵でした。

一流の建設会社に入り、女性管理職としてバリバリ働いているハズの彼女が、なぜ夜は娼婦をやっていたのか?

『わたし』は犯人の裁判を傍聴し、妹の日記を読み、ある縁で手元に来た和恵の売春日記も読みます。

そこに書かれていた、あまりに侘しく悲しく辛い、和恵の半生。

いっぽうでユリコは、歳をとり美貌を失っても、淡々とそれを受け止めています。

人が怪物になるのは、一体どういう時なのか……。

普通の人がある日、突然おかしな道に踏み込んでしまう。

ぞっとするほど近くにある落とし穴を、感じてしまいました。

 

グロテスクの主要登場人物

 

語り部筆頭は、ユリコの姉である『わたし』です。

幼い頃から、常に美しい妹と比べられてきた彼女。

そのせいで深い諦観を持つ一方で、自分には隠れた魅力があるのではないか……と、密かに思い続けています。

また人のことはよく見ているけれど、自分のことは直視出来ていません。

和恵を笑うくせに、自分もまけないぐらい「イタイ女」。

読んでいて、胸がキリキリする人物です。

 

そして『わたし』の年子の妹である、ユリコ。

不器量な両親にも姉にも似ていない、絶世の美貌の持ち主です。

ですが、そのせいで母の愛を受けられず……小さい頃から、自分を欲するのは男性たちだと理解していました。

冷静に周りを分析し、流されるように生きる……自分を「天性の娼婦」と呼び、好意を向けられた男性には、自然に身体を預けます。

男性に求められ、弄ばれ、そんな自分を淡々と受け入れる……。

高級娼婦として傅かれていましたが、歳を重ねてからは太り、醜く衰えていきます。

立ちんぼをしている最中に、客である『チャン』に殺されました。

 

事件の被害者であり、陰の主人公でもある『佐藤和恵』。

東大を出て一流会社で働く父親に、期待をかけられて育ちました。

よく言えば素直、悪く言えば思い込みが強く、空気の読めない性格。

やせっぽっちで美人でもありませんが、美人しか入れないチアガール部に入ろうとしたり。

何かと浮いた行動をとるので、陰で笑われています。

そんな彼女は父親が急死した後、彼と同じ建設会社に入社。

夢を抱いてバリバリ働きますが、やがて壁を感じて壊れていきます。

「必要とされたい」

「会社と違う自分になりたい」

という思いから、夜はホテトル嬢として身体を売るように……。

ですが、そこでも居場所を失い、やがて路上で客を引く「立ちんぼ」へと落ちていきます。

 

そして和恵と『わたし』の高校のクラスメイトが、学校一の才女『ミツル』です。

小柄で愛らしい容姿に、誰も敵わない高い成績。

運動も勉強もいつも一番ですが、それを鼻に掛けない謙虚な性格で、皆に一目置かれています。

しかし医者になった後、オウムを思わせる宗教に入信した彼女。

夫と共に人を死なせてしまい、六年の刑務所暮らし。

出所後、和恵とユリコの裁判で、『わたし』と再会しました。

 

グロテスクは強烈なキャラクター揃いに揃っている

 

正直、素直に感情移入出来る人は少ないです。

ユリコはタフだけど、あまりに美人過ぎて遠いし。

『わたし』は性格が悪いし、『和恵』は見ていられないほど痛々しい。

唯一『ミツル』は魅力的ですが、彼女も道を踏み外し、宗教にのめり込んで人を殺めます。

ですが出所後、高校時代の恩師『木島先生』を通じて立ち直り、彼と再婚します。

一度道を間違えましたが、結局彼女が一番客観的に、周囲や自分を見ていたように感じます。

再会した『わたし』に、

「貴方はいつも、顔のことばかり」

と厳しくも、筋の通った言葉をぶつけました。

そう、人間は顔じゃないといいたげな『わたし』こそが、誰より顔に拘っていた……。

ミツルは、容赦なく彼女のコンプレックスを暴いたのです。

 

ミツルも、母のせいで昔はイジメを受けたり、『わたし』の祖父と母が交際したりと、何かと苦労が多い半生を送っています。

 

犯人・チャンと和恵の出会い

 

会社で出世も出来ず、周りとの人間関係も上手くいかない。

さりとて、母を養う為に仕事もやめられない。

恋人も、親しい友人もいない……そんな辛い毎日から逃避するように、夜はホテトル嬢をする和恵。

ですがお金を稼ぐことばかりで、心を込めた対応をしないので、周囲の反応は悪いです。

でも、それに本人は気付かない。

それどころか、ライバルを蹴落とそうとした小細工が明るみに出て、店を追われてしまった和恵。

彼女は道玄坂の地蔵の前で、立ちんぼを始めました。

恐ろしいのは、

「買ってくれれば誰でも良い」

と、どんどん客のハードルが下がっていくこと。

最初は路上で客をとるなんて……と思っていた彼女は、どんどんその状況に慣れていきます。

金さえ払ってくれれば、ホームレスでも平気。

空地で性行為をすることも、屋外で排泄することも。

タガが外れていくさまが恐ろしく、それに気付かない和恵は、もっと恐ろしくゾクゾクしました。

そして和恵の最大の問題は、思い込みが激しいこと。

 

高校時代、『わたし』に言われた

「痩せればキレイになれる」

という一言を鵜呑みにし、四十歳を前にしても、まだダイエットを続けています。

骸骨のように痩せた身体に、道化のような厚塗り化粧。

すれ違った人に「化け物」と笑われても、彼女はなぜなのか理解出来ません。

そして出会ってしまった、「チャン」。

彼もまた、怪物でした。

優しくしてくれそうな予感に、彼に会いに行ってしまった和恵。

「優しくして、必要として」

と痛いほど思いながら、優しくされるような振る舞いが出来ない……。

和恵の孤独が刺さって、読んだ後しばらく、気持ちが落ち込みました。

 

最後に

 

気持ちが沈んだ時に読むと、引きずり込まれてしまう……ブラックホールのような、負のパワーを持った作品です。

誰か一人でも、大切にしてくれる人がいれば、事件の被害者にならずに済んだ和恵。

そして彼女の運命を狂わせたツケなのか、『わたし』にも終盤、思いがけない変化が訪れます。

コンプレックスと、底なしの孤独。

日常の横に口を開けている地獄への入り口に、ヒヤリとするダークな作品でした。


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最後まで読んでいただきありがとうございました。


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